大学院子ども学研究科の廣畑講師は,音楽と人との関わりをテーマに研究を行っています。
先日,研究活動の一環として,学生たちと香川県直島町の「きらめき音楽会」に参加しました。この音楽会は,地域住民の熱意によって24年間続く伝統あるイベントで,町の教育委員会も後援しています。
現代アートの島として知られる直島町ですが,教育や地域づくりにおいても先進的な取り組みが行われています。「きらめき音楽会」は,そのような直島町の魅力的な取り組みの一つです。発起人の堀口容子さんは,直島町の民生委員を長く務めておられる「直島のアドバイザー」ともいえる存在で,この度,令和6年度民生委員功労者として厚生労働大臣表彰を受賞されています。子どもたちの豊かな心を育む場所を作りたいという思いから,この音楽会を立ち上げられたそうです。
演奏会前に学生と教員で,フィールドワークを実施し,堀口さんのお話をお聞きすることができました。当時,堀口さんは「こころの相談員」として地元中学校に訪れていた時期があったそうですが,休憩時間などで聞こえてくる生徒の美しい歌声や,ピアノの音色に感動したそうです。しかしこのような才能を披露できる音楽ステージが当時の直島には存在しておらず,子どもの才能を開花させるような場所ができないかと考えあぐね,この会の企画を思いついたということでした。
堀口さんの活動は,アメリカの教育哲学者Noddings, N.(1929-2022)が提唱した「ケア」の概念を彷彿とさせます。Noddingsは,教育において教師が生徒に対して深い関心を持ち,一人ひとりの成長を支援することが重要であるという「ケア」の概念を主張していますが,堀口さんの子どもたちひとりひとりへの深い愛情と,地域コミュニティへの貢献は,まさにその概念を体現しているといえるでしょう。「きらめき音楽会」は単に演奏活動を披露し合うだけではなく,地域住民の絆を深めるとともに,子どもたちの成長を促す重要な場となって,その活動の輪が共感する人々を通じて連鎖・拡大し続けています。
今回の経験を通して,教員は,教育の現場において「ケア」の概念がいかに重要であるかを改めて認識しました。この経験をもとに,保育者を目指す学生たち一人ひとりの個性や状況に寄り添い,彼らの成長をサポートするような教育環境を構築できるよう研究活動をさらに深めていきたいと考えています。
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2024.12.23 | 子ども学研究科